「浦和でずっと慣れた環境でプレーしていて、自分の中で"引っかかっていた"ところがあった。そんな中で、ガンバさんから2年連続でオファーをもらって。競争の中で、選手として成長したいと思ってこっちに来ました」。

 G大阪は昨季オフにも、矢島に獲得オファーを送っている。15年から2年間、岡山に期限付き移籍して中心選手としてプレーし、16年のリオ五輪にも出場したMFを、G大阪は継続的に追いかけていた。岡山ではボランチとして長短のパスを操って司令塔を務め、リオ五輪の日本代表では2列目のチャンスメーカーとして結果を残した矢島に、G大阪サイドの評価は高かった。

 しかし矢島は昨オフ、G大阪への移籍ではなく、浦和への復帰を選択。慣れ親しんだ赤いユニホームで、J1でのレギュラー取りに挑んだ。ここで矢島の道を阻んだのが、元日本代表MF柏木だった。左足から創造性あふれるパスを繰り出す司令塔とインサイドハーフのポジションを争ったが、リーグ戦の出場は11試合(1ゴール)。チャンスは与えられたが、レギュラーポジションを獲得することはできなかった。

 浦和は昨季、2度目のACL制覇と大きな成功をおさめたが、個人としては納得のいくシーズンを送ることができなかった。そんな矢島の元に今オフ、G大阪から2度目のオファーが届いた。この状況を打破するには、慣れ親しんだ浦和から離れ、新たな環境に飛び込むしかない―。そう考え、矢島は移籍を決断した。

 一方で、G大阪にも大きな壁が立ちはだかる。元日本代表MF遠藤だ。日本代表で歴代最多の152キャップを誇り、Jリーグを代表する司令塔は、矢島にとってもひとつの理想型。「ボランチとして身体能力が高くないのに、ずっと日本を代表している選手。僕も足が速い訳じゃないし、がちゃがちゃと(ボールを奪いに)いけるわけじゃない。最大級のお手本です」と語っている。

 G大阪は近年、パスワークを武器とした、いわゆる"遠藤タイプ"のMFを、ほとんど補強していない。ベテランの域に達しても、高いレベルでプレーを続ける背番号7の代わりを探す必要はなかったからだ。昨季、矢島にG大阪がオファーを送った際も、阿部(現川崎)、大森(現F東京)が移籍したため、2列目の補強という意味合いが大きかった。

 しかし今オフは日本代表MF井手口の海外移籍にともない、G大阪はボランチが1枚流出している。今季から就任するレヴィー・クルピ監督が、矢島をボランチとして考えても不思議はない。矢島自身はポジションにこだわらない姿勢もみせ、遠藤をライバル視したような言葉は一切なかった。それでも「新監督なので最初はみんな横一線だと思うし、ここにきたからには試合に出られるようにしたい」と、レギュラーの座には強いこだわりをみせた。

 浦和という"家"を出て、決して試合出場が保証されているわけではないG大阪への移籍を選んだ矢島。その道の険しさが自分を成長させると信じ、大阪の地で新たな挑戦を始める。


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